蒼い少年と和傘の少女 [小話]
衝動的にうちの子たちの出逢いが書きたくなりました。
蒼とラヴの初対面のシーンを妄想してみました。
珍しく小説です。とっても短いです。そして拙いです。
リヴリーの擬人化描写です。
挿絵ありです。
苦手な方はお戻りください。
それでもいいよ!読んでやるよという、
海のように心の広い方は続きからどうぞ。『蒼い少年と和傘の少女』
ある梅雨の季節。降りしきる雨の中、ラヴィーナは紅い和傘をさして、
現在仲居見習いをしている旅館へと足早に向かっていた。
篠突く雨のせいで視界はとても悪い。
道もところどころぬかるんでいて、足がもつれそうになる。
加えてラヴィーナは普段から動きにくい和服を来ていて、
足取りはどこか危なっかしかった。
いつも通る公園の前で、ふと見慣れぬ面影が目に付いた。
ラヴィーナがその人影に目を奪われたのは、
その人物が傘もささずにベンチでぼーっと、
雨にうたれるがままにまかせいている姿が異様に映ったからだった。
自分とそれほど年は離れていない、男の子と分かった。
瞳、髪から服装までコバルトブルー一色で、
どこか不思議な雰囲気が漂っている。
彼は少し上を仰ぎ、目を閉じていた。
ラヴィーナは、公園の中に入ってベンチの前に立ち、
腕を伸ばして男の子の上に傘を差し出した。
「あなた、そんな風にしていたら、風邪をひいてしまうわ」
男の子は急に顔を叩く雨水が途絶えたことに驚いて、目をパチリと開けた。
髪も服も雨水をたっぷりと含んで重たくなり、肌に張り付いていた。
頭上が紅く染まったと思ってよく見ると、上を覆っているのは紅い傘だった。
正面には着物の見知らぬ少女が立っていて、まっすぐこちらを注視していた。
「きみ、誰?」
どこか寝ぼけたような声で男の子は尋ね、ラヴィーナはきびきびと答える。
「私はラヴィーナ。あなたはこの辺の人?名前はなんていうの?」
「僕はコバルト。…住んでるところはちょっと遠くかな。…ところで、この傘いらないよ」
コバルトは少し怪訝な顔をする。ラヴィーナはキョトンとして声を上げた。
「どうして?」
コバルトは短く、「雨が好きなんだ」と答えた。
ラヴィーナはちょっと呆れたように肩を落とす。
「でも、ずっと雨にあたっていたら、体が冷えてしまうわ」
そう言われながらも、コバルトは恋しそうな目ですぐ上空の雨空を見つめた。
話しても埒があかなそうだ。二人は困ったようにお互い目を合わせた。
ラヴィーナは、強引に傘の柄を握らせて、
「この傘、使って。それじゃあ私、急いでるから」
と、引き止める声さえお構いなしに、公園を出て去っていった。
コバルトは、傘を見上げてつぶやいた。
「おせっかいな人だなぁ。自分は濡れてもいいのかな」
そんな独り言は、「ザーっ」という雨の音にかき消され、ほかの誰の耳にも聞こえない。
しばらくすると、雨は小降りになり、やがて止んで雲間から光がさした。
コバルトは紅い和傘を閉じて、ラヴィーナが去った方に視線を向ける。
「この傘、どうしよう」
おそらく彼女はまたここを通るだろう。
明日の同じ時間にまたここに来て、同じ場所で待っていよう。
コバルトは日差しから逃げるように、立ち上がって帰路についた。
END
ここまで読んで下さりありがとうございました。
蒼とラヴの初対面のシーンを妄想してみました。
珍しく小説です。とっても短いです。そして拙いです。
リヴリーの擬人化描写です。
挿絵ありです。
苦手な方はお戻りください。
それでもいいよ!読んでやるよという、
海のように心の広い方は続きからどうぞ。『蒼い少年と和傘の少女』
ある梅雨の季節。降りしきる雨の中、ラヴィーナは紅い和傘をさして、
現在仲居見習いをしている旅館へと足早に向かっていた。
篠突く雨のせいで視界はとても悪い。
道もところどころぬかるんでいて、足がもつれそうになる。
加えてラヴィーナは普段から動きにくい和服を来ていて、
足取りはどこか危なっかしかった。
いつも通る公園の前で、ふと見慣れぬ面影が目に付いた。
ラヴィーナがその人影に目を奪われたのは、
その人物が傘もささずにベンチでぼーっと、
雨にうたれるがままにまかせいている姿が異様に映ったからだった。
自分とそれほど年は離れていない、男の子と分かった。
瞳、髪から服装までコバルトブルー一色で、
どこか不思議な雰囲気が漂っている。
彼は少し上を仰ぎ、目を閉じていた。
ラヴィーナは、公園の中に入ってベンチの前に立ち、
腕を伸ばして男の子の上に傘を差し出した。
「あなた、そんな風にしていたら、風邪をひいてしまうわ」
男の子は急に顔を叩く雨水が途絶えたことに驚いて、目をパチリと開けた。
髪も服も雨水をたっぷりと含んで重たくなり、肌に張り付いていた。
頭上が紅く染まったと思ってよく見ると、上を覆っているのは紅い傘だった。
正面には着物の見知らぬ少女が立っていて、まっすぐこちらを注視していた。
「きみ、誰?」
どこか寝ぼけたような声で男の子は尋ね、ラヴィーナはきびきびと答える。
「私はラヴィーナ。あなたはこの辺の人?名前はなんていうの?」
「僕はコバルト。…住んでるところはちょっと遠くかな。…ところで、この傘いらないよ」
コバルトは少し怪訝な顔をする。ラヴィーナはキョトンとして声を上げた。
「どうして?」
コバルトは短く、「雨が好きなんだ」と答えた。
ラヴィーナはちょっと呆れたように肩を落とす。
「でも、ずっと雨にあたっていたら、体が冷えてしまうわ」
そう言われながらも、コバルトは恋しそうな目ですぐ上空の雨空を見つめた。
話しても埒があかなそうだ。二人は困ったようにお互い目を合わせた。
ラヴィーナは、強引に傘の柄を握らせて、
「この傘、使って。それじゃあ私、急いでるから」
と、引き止める声さえお構いなしに、公園を出て去っていった。
コバルトは、傘を見上げてつぶやいた。
「おせっかいな人だなぁ。自分は濡れてもいいのかな」
そんな独り言は、「ザーっ」という雨の音にかき消され、ほかの誰の耳にも聞こえない。
しばらくすると、雨は小降りになり、やがて止んで雲間から光がさした。
コバルトは紅い和傘を閉じて、ラヴィーナが去った方に視線を向ける。
「この傘、どうしよう」
おそらく彼女はまたここを通るだろう。
明日の同じ時間にまたここに来て、同じ場所で待っていよう。
コバルトは日差しから逃げるように、立ち上がって帰路についた。
END
ここまで読んで下さりありがとうございました。
2014-06-29 07:57
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